研究テーマ

研究課題名(課題番号) 血液凝固異常症等に関する研究(H29-難治等(難)-一般-012)
研究代表者 村田 満
研究事業予定期間 平成29年4月1日から平成32年3月31日まで3年計画

研究組織情報

研究者名 分担する研究項目 所属研究機関における職名
村田 満 研究総括(全疾患)
関連学会/行政との連絡、調整
教授
冨山 佳昭 ITP研究の総括
ITP診断基準改訂
治療ガイド改訂
准教授
桑名 正隆 ITPの新しい診断基準の妥当性の検討および新規検査法の保険収載 教授
羽藤 高明 ITPの疫学調査 准教授
松本 雅則 TTP研究の総括
診療ガイドラインの改訂
治療ガイド作成
教授
宮川 義隆 ITP,TTP,aHUS診療ガイドラインの改訂 教授
小亀 浩市 TTP、aHUSの病態調査
治療ガイド作成
部長
南学 正臣 aHUS研究の総括 教授
香美 祥二 aHUSガイドライン策定 教授
森下 英理子 先天性血栓性素因の診療ガイドの作成
特発性血栓症研究の総括
教授
津田 博子 特発性血栓症の包括的診療ガイドライン策定、全国実態調査 教授
小嶋 哲人 先天性血栓性素因の分子遺伝学的病態解析 教授
小林 隆夫 静脈血栓症/動脈血栓症疫学調査(厚生労働省データ、女性ホルモン剤使用者)、血栓性素因合併妊娠及び女性ホルモン剤使用者の診療ガイド等の策定 名誉院長
大賀 正一 特発性血栓症(小児領域)診療ガイドの策定 教授

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研究の概要

難治性疾患政策研究事業として、関係学会より承認された診断基準・重症度分類、診療ガイドライン等(Mindsに基づく)の確立や改正及び普及などを行う。対象疾患は指定難病である特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)の4つである。小児と成人を対象とし、さらに小児から成人への移行期医療も含める。


(1)ITP

ITPの診断は、現在においても除外診断が主体であり、病態に基づいた特異性の高い診断法の開発が強く望まれている。治療指針に関しては、TPO受容体作動薬の適正使用指針ならびにその啓発が必要である。また、リツキシマブの保険収載の可能性も高い。今後3年間の課題として、(A)全国のITP臨床調査個人票の解析の継続、(B)成人ITP治療の参照ガイド2012年版の改訂、(C)ITPの診断法としてのELISPOT法の検討、を3年間で行なう予定である。


(2)TTP

TTPは、無治療の場合は致死率90%以上であるが、血漿交換により死亡率20%に激減した。我々は、 TTP診療ガイドを作成し、TTPの予後改善に取り組んできた。さらなる予後改善のため、ADAMTS13検査の保険適用取得、リツキシマブの保険適用拡大を2017年度に達成する。また、現行の治療法の問題点である血漿交換の回数制限などを検討する。さらに、新規治療薬として遺伝子組換ADAMTS13やCaplacizumabについての評価を行う。


(3)aHUS

溶血性貧血、血小板減少、臓器障害を呈する血栓性微小血管症(TMA)の中で、aHUSは補体関連因子の異常を原因とする症候群である。本研究班は、本邦で唯一のaHUS患者の遺伝学的、蛋白質学的な診断を行える研究班であり、本邦最大の患者コホートを有している。今後も引き続きaHUS疑診患者の診断を行うと共に、本邦の疫学的、蛋白質学的、遺伝学的解析を継続し、本邦の新たなガイドライン作成に向けた活動を実施する。


(4)特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)

静脈血栓塞栓症(VTE)である特発性血栓症の予知・予防のための対策確立を目的とする。実績として、特発性血栓症の先天的な誘因となる先天性血栓性素因について、新生児から成人に至る全ての年齢に対応できる診断基準と重症度分類を作成し、平成29年度より指定難病として認可されることになった。平成29年度は(a)診断基準の普及と(b)特発性血栓症の包括的診療ガイドラインの策定、30年度以降は(c)全国実態調査を行う予定である。


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流れ図


ITPグループ

TTPグループ

aHUSグループ

特発性血栓症グループ


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研究の目的、必要性及び特色・独創的な点

学会と連携して難病の医療の水準向上、行政的課題の解決を目指す。研究班は4つのサブグループに分け、それぞれのエキスパートが研究班全体と連絡を密にとりながら進める。

(1)ITP

疫学調査と治療実態の把握、治療ガイドラインの策定、病態に基づいた診断法の開発を目的としている。研究班の実績として、成人ITP治療の参照ガイド2012年版、妊娠合併ITP診療の参照ガイド、を公表した。これら実績を基盤としてITP診療のさらなる向上を図るものである。


(2)TTP

1998年からADAMTS13解析を通じて症例の集積を行い日本国内のTTP症例の解析を行ってきた。特に先天性TTPの症例数は全世界の1/3を占め際立っている。前年度までにTTP診療ガイドを作成(「臨床血液」、印刷中)するなど予後改善を目的に活動してきた。今後もADAMTS13自己抗体やADAMTS13遺伝子異常の解析を継続する。また現行の治療法の改善や新規治療薬の検討を行う。


(3)aHUS

TMAは症候群であり確定診断には通常実施できる臨床検査以外の特殊検査が必要である。aHUSの診断は東京大学、遺伝子解析は国立循環器病研究センターで実施する体制を既に整備しこれまでに約120名の診断(羊赤血球溶血試験、抗H因子抗体解析系、遺伝子解析)を実施し、患者コホートを集積している。新たなエビデンスを創出しaHUSガイドライン作成に向けて活動する。


(4)特発性血栓症

発症誘因となる先天性血栓性素因の病態解析と診断法の開発、全国実態調査による疫学・治療実態の把握、小児期から成人期発症患者全てを対象とする包括的診療ガイドラインの作成を行う。また重症型先天性血栓性素因患者の予後改善を図る。これまでにプロテインS K196E変異が日本人特有の先天性血栓性素因であることを明らかにした。また先天性血栓性素因の診断基準を作成した。


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期待される成果

(1)ITP

本研究ではITP臨床調査個人票を解析し、ITP診療の実態に関して極めて貴重な情報を提供することが可能である。また、本研究班で作成したITP治療の参照ガイドはITPの治療目標ならびに新規薬剤の適正使用に関して大きな影響力を発揮している。これらの成果は本疾患の行政の施策へも直接影響を与えうると考えられる。


(2)TTP

我々は既にTTP診療ガイドを作成して、診断・治療法について示したが、日本国内でのデータを蓄積して、診療ガイドを改定していくためのデータを集積する。さらに、現在では保険診療で使用できない検査や治療法の有用性を明らかにして、TTP診療ガイドの改定に使用すると共に、さらなるTTP患者の予後改善を図る。


(3)aHUS

遺伝子検査や特殊補体系検査を実施しなければ確定診断が不可能な疾患であり、本邦の発症数自体が不明である。新規治療薬エクリズマブが本疾患の適応であり、海外では他の補体治療薬も治験段階にある。本研究で集積された知見をもとに本邦のガイドラインを策定し、適切な診断、治療が可能となる。


(4)特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)

本研究では、集積した病態の解析、全国調査、臨床調査個人票の解析により、本邦における先天性血栓性素因の症例数、血栓発症頻度、血栓発症の危険因子などが明らかとなり、貴重な情報を提供することが可能である。さらに、診断基準の普及ならびに診療ガイドの作成は、効果的なVTEの発症予防策として患者QOLの改善が期待できる。


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研究計画・方法

(1)ITP

(A)全国のITP臨床調査個人票の解析と、その治療実態に関する情報の解析(羽藤高明)ITPの治療内容、合併症を経年的に把握する。さらに新規薬剤であるTPO受容体作動薬の使用状況も解析する。(B)(冨山佳昭、柏木浩和)成人ITP治療の参照ガイド2012年版の改訂に着手する。リツキシマブの保険収載が現在審議中であり、正式には承認されてからの始動となる。(C) ITP診断法の検証。網状血小板比率測定法の標準化、ELISPOT法によるITP診断の検証(冨山佳昭、桑名正隆)。現在MBL社主導でELISPOT法のキット化が進行中であり、医師主導臨床試験として、キットの性能の確認、さらにはその診断法としての有用性の検討を行う。


(2)TTP

今後の3年間で実施する項目として、ADAMTS13解析を通じたTTPの症例集積を継続する(松本、和田、小亀)。さらに、TTP患者の予後改善のために、現在の標準的治療法とされる血漿交換とステロイド治療法の方法について検討する(松本、和田)。血漿交換については、保険適用の上限である週3回実施の撤廃を目指して、血漿交換の必要回数を検討する。ステロイドパルス療法とステロイド内服のどちらが有用であるか比較すると共にステロイド減量の方法についても検討する。TTPの新規治療法として遺伝子組換ADAMTS13やCaplacizumabが報告されており、これらの有効性を日本国内の症例で検討する(松本、宮川)。さらに、ADAMTS13活性とインヒビターの保険収載と、リツキシマブのTTPに対する保険適用拡大を平成29年度中に達成する(松本、宮川)。


(3)aHUS

全国の医療機関からaHUS疑診患者を引き続き集積し、病歴や羊赤血球溶血試験でスクリーニングを行い、その後、抗CFH抗体の検討および、原因遺伝子として知られている補体因子(CFH、CFI、MCP、C3、トロンボモジュリン、CFB)の遺伝子解析を行う(加藤)。患者レジストリシステムはUHCTAcressで既に構築しており、鑑別診断、臨床情報、遺伝子変異、特殊補体検査の結果を集積する(南学)。各種学会での発表、論文化、難病情報センターHPへの反映、各主治医へ当研究班の研究結果に基づいた診断結果を提示し、得られた研究成果をフィードバックする。最終的には本研究班メンバーや日本小児科学会、日本腎臓学会で得られた成果をもとにMindsの準じたガイドラインを策定する(香美)。現在約120名の登録患者がおり、200名を目標とする。


(4)特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)

(a)全国の医療機関からの先天性血栓性素因症例の遺伝子解析を継続し、遺伝子変異部位のデータを集積する(小嶋、大賀、森下)。 (b)小児期、移行期、成人に至るまでの「先天性血栓性素因患者の診療ガイドライン」を作成する(小林、小嶋、津田、大賀、森下)。特殊な状況として、「先天性血栓性素因患者の周術期診療ガイドライン」、および「妊娠合併先天性血栓性素因患者の診療ガイドライン」も策定する。現在のところ活性測定法の標準化がされておらず、また測定法によっては活性低下を検出できない場合があり、(d)測定法の標準化をめざすとともに偽陰性となる場合の対応法を検討する(小嶋、森下)。(e)「先天性血栓性素因患者会」の発足に向けて援助し、会設立後は患者にとって有用な情報を発信する(大賀、森下)。(f)臨床調査個人票の解析とともに保健未認可の血液製剤の使用状況や効果を検討する(大賀)。(g)全国実態調査を行う(小林、津田)。特に厚生労働省患者調査データの二次利用申請を行い、動脈血栓症および静脈血栓症等について分析する。


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倫理面への配慮

本研究ではヒトの遺伝子解析研究、疫学研究、ヒトゲノムを含む臨床検体を用いた研究を含む可能性があり、ヒト由来試料および情報等の提供者、その家族・血縁者その他関係者の人権及び利益の保護について十分配慮する必要がある。計画の対象とする個人の人権を擁護するため、適切なインフォームド・コンセント、身体的安全性および個人情報の保護など、協力者の尊厳および人権を尊重する。十分な説明を行い、双方の理解の上で文書による同意をとる。診断基準やガイドライン策定にあたっては利益相反に充分な注意を払い利害関係について公開するとともに必要な措置を講ずる。


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研究代表者 村田 満 慶應義塾大学

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